01-1表現する人と寄り添う人
奏(かなで)さんと史枝(ひとえ)さん
関係性は娘と母
テーマ 家族と友人に寄りそわれ、表現を通して自分自身をまなざしていく
天井から奏さん、史枝の全身肖像写真 (800×1200mm)がつられている。
裏には、奏さんが自宅庭で植物をめでる写真。
展示作品は、タイトル「馬見ヶ崎川シリーズ」2作品。開いた紙袋に、ペン、アクリル絵具、色鉛筆で描かれている。
作家コメント:祖母に信頼されなくなり、寂しかった時に描きました。見えてきたものを描きました。川以外描きたいものが決まっていなくても、思うことが出るのだと思いました。絵の右端の人が山形に住む祖母です。抱えられているのが弱った私です。祖母は私を助けてくれました。
01-2背景レポート
奏さんの自宅アトリエには、自身を支えるたくさんのアイテムがあります。山形のおばあちゃんの家で使っていた椅子や家電、友人で画家の春香さんからプレゼントされた絵など。馬見ヶ崎川シリーズは、おばあちゃんがホームに引っ越す前に一緒に過ごした時間が描かれています。2024年には、奏さんが絵を描き、妹の知江(さとえ)さんが文章をてがける絵本も共同制作しています。
写真は、自宅アトリエで撮影した奏さんの肖像写真。
01-3寄り添う人のことば
審査員コメント/瀬尾夏美
過去の思い出をテーマに描いたという本作は、抑えられた暗めの色調でまとめられながらも、とても不思議な魅力を発しています。画面の中を注意深く見てみると、ひとつひとつのモチーフもまたすこし不思議な色や姿をしているけれど、それらはきっと作者にとっては必然的な形をしていて、おそらくその背景に、蓄積された物語や確かな記憶が存在するのだろうと思わせてくれる。絵の世界に招かれ、それを眺め、あれこれ見つけていく時間が楽しく、心地よかったです。(審査員:瀬尾夏美)
お店の方が展覧会を勧めてくれました。奏は絵の制作から看板まで、すべて一人でやりました。毎月末には新作を搬入し、大きな絵も描いたし、七夕の星空やヨーロッパの生活、植物など、テーマは常に新しかった。販売するスペースも頂き、絵ハガキ、一筆箋、ポチ袋などを作りました。お客さんの感想に答えて、商品を美しく改良し、毎日新商品を出していきました。多忙でしたが、奏では絵を追求し、心眼を深めていきます。(史枝)
絵を描き始めたのは、甥が生まれた頃、子供の絵を描いたら、家族がよろこんだのがきっかけでした。
奏は、絵に熱中すると時間を忘れて、手が痛くなるほど描き続けます。さわやかな色の流れのように、細かい模様を星の数ほど。心が暗くなった時は、絵を描くと少しすっきりすると言います。(史枝)
この馬見ヶ崎川シリーズは、山形のおばあちゃんの家で描き始めました。紙がなかったから、雑紙の中から紙袋を持ってきて、畳に寝っころがって描きました。今はもう家はないけれど、“山形”が詰まったこの絵があって、描いてよかったって思います。(奏)
馬見ヶ崎川は、子どもの頃遊びに来ていた川。大人になってからは、私が病気療養中に、おばあちゃんが半年くらい預かってくれた時、毎日車で散歩に連れて行ってくれて、二人で歩いた場所の一つ。(奏)
01-4寄り添う人の川柳
おばあちゃん 歩いたこの道 ヤマブキ色(奏)
雨の日の ガラス窓には 絵が描ける(母)
変わる地球の時を止めた感触(父)
草の音に 優しい心の 雲のよう(妹)
おりょうりに ピアノおえかき じょうずだな(甥_小学5年生)
さっちゃんは ぼくのおえかき ほめるがな (甥_小学2年生)
力まない時に いい絵が描けている(母)
なんやかや いうなわが子の ひとり立ち(母)
かなでの絵 きらきらおめめ たからもの(浅野春香)
はるちゃんのだいじ いつも ありがとう(奏)