昨年12月19日、山形市で「山形県の文化施設においてのアクセシビリティ向上を考える」に参加しました。その際、上山市在住の視覚障害者、木村清さんからナビレンスと視覚障害について教えていただきました。視覚に障害があるということは移動困難者であること。全盲ではその場から視覚的な情報をまったく取れないこと。情報が0から1になるだけでもとても大きことであること。まさに他者の靴を履いてみる体験でした。
デザインの仕事は、視覚伝達の技術とも言えます。伝えたい情報を視覚情報や技術をつかって伝えるのがデザイナーやイラストレーターの仕事です。イラストレーターとデザイナーである僕にはとても考えさせられる時間でした。デザイナーが、視覚障害者の方に情報を伝えるには、合理的配慮には何ができるのか、ナビレンスを使えば何が可能になるのか。
そこで、さっそくでしたが「わたしとあなたの表現」展で、お試し程度ですが、ナビレンスを設置してみることにしました。0を1にしてみる活動です。(来年のポスターにはナビレンスをはじめから入れてみたいと思います。)
企画者やデザイナーが一手間加えることで、情報保障(特定の障害のある人が情報を収集できない時、代替手段をよういて提供し、その人の「知る権利」を保障すること)を可能にすることができます。
しかし、今回のナビレンスの設置は、いちデザイナーの好奇心と手弁当と責任によるものです。
今後もナビレンスをはじめとした情報保障をわたしたちの地域で実現していくためには、多くの方の理解と予算も必要になってくると思います。もちろん、すぐに無料ではじめられることもたくさんあります。
海外では施設だけでなく、バス停や野外の空間の案内にも使用されているようです。
どんな技術も普及しないことにははじまりません。卵が先かニワトリが先かです。ナビレンスをあちこちで見かけるようになるためには、最初の1を2に広げていくのが大事かと思います。上山市の木村さんからもらったバトンをちょっとだけ増やして、また来場者の方に渡したいと思います。
ぜひ、ナビレンスのアプリをダウンロードし体験してみてください。そして、視覚に障害のある方や公共施設の方、県や市町村の議員さんにナビレンスを紹介してください。一人ひとりのちょっとした行動が、0を1に1を10へと育てることができると信じています。
(デザイナー菊地純)